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The effect of a magnetic field on sedation of cervical dentin hyperesthesja
was examined clmicalIY bY the newIY developed magnetic device. Diagnosis
of the hyperesthesia was done bv air blast and the hyperesthesia Was classified
into four grades accordmg to the severltv of induced pain. Then.the myoIYed
teeth Ⅵere exposed to three typcs of electrlc magnetic apparatuses in
a double blilld manner - a combined type of pulsed and per manent magnetic
6eld.a pulsed magnetic 6eld type, and dummY. These magnetic apparatuses
were so deyel()pcd as to sandwich thetooth crown between andSⅨ'les on
the buccal and lingual sides. The ledation effect as estlmated by companng
the grades of hyperesthesia before and after the exp Ⅶrel as extremely
eHective,eHective- ineective, and exacerbation. ith the combined type under
the condition of 4 μF(condenser capacity),15Hz,320V・ 5 minutes exposure-3
out of 50 cases(6.0%)were extremely e仔ectiye and 38 out of 50 cases(76.0%)were
eective. ⅥTth the pulsed type under the same mndition,one out of 50 cases(2.0%)was
extreme・ lv eective and 35 out of 50 cases(70.0%)were e任ective. VVhen
dummy Was usedl one out of 50 cases(2.0%)was extremely eHective and 6 ollt
of 50 cases(12.0%)were eHective. No exacerbatiol1 Ⅳas observed with any
apparatus. From the statiS tical analysis of the results,there Was a signi丘cant
dMerence between the combined type and dummy, also between the pulsed type
and dummy- but no signi6cant dⅢerence between the combined type and the
pulsed type.lt Was proved that pulsed magneticeld Was eective to hyperesthesia
dentin. The magnetic ux density in the tooth crown posltlon Was from 1400
to 3100 Gauss in the com- bined type and from 1300 to 1750Gauss in the
pulsed type.The c。mparatlve lnvestigation among dMerent condition parameters
revealed that the combined type could be sedative to hyperesthesia dentin
when the peak energy output Was set OVer 60,00OWattes. The temperature
rlslng on the p2 tooth surface by this apparatus Wasexamined with a thermography
at a ma*lmum of 7C after 5 mlnutes workjng. so,the risk of heat damage
to the dental tissues Was excluded and it Was suggested that the sedative
eHect was not attributed to the heat- but to the magnetic Held. (Request
migmal article repnnts to Dr.KTKI)
1887年のMAXWELLによる電磁力程式の発見, 1896年に磁気光視,即ち磁場が現神経に影響を7えるという現象の発見が続く中で,磁気治療やそれに関する研究の姿勢は次第に科学的なものとなってきた.20 世紀に入ると,交番磁場の生体への作用についての研究が始められ,1922年には,MAESHIMAが磁気治療器を開発し,磁気を人体に作用させることによって末梢神経と組織や細胞に軽い刺激を与え,血液の循環を促進し,皮膚の異化作用を盛んにし,新陳代謝を調節する.その結果として健康を増進し,疾病を予防し,病気の回復を促進すると述べている1).1930年代中頃からは電磁場の非熱効果が注目されるようになり,創傷治癒の促進,血行障害の改善,水腫や骨折の治療,様々な柊痛の緩和などの臨床応用に関する研究が盛んに行われるようになった1・2).GINSBERG(1940)3)は傷害を受けた組織に物理化学的現象が起こるなら磁気がその過程に影響を与えると仮定して,パルス磁気装置を開発した.CAMERON(1961)4)は,イヌを用いてパルス磁気の放射エネルギーが創傷における白血球,組織球,綿維芽細胞の数を増加させ,水瞳と血腫の吸収を促進し,フィブリンやコラーゲン線維の形成を早める作用のあることを示した.そして,この研究は実験的に FENN(1969)5により,臨床的にはWILsoN(19726), 19747)),そして,PASILAら(1978)8)により確認された.一方,NADASD1(1960)9)はラットで化学的に引き起こされた関節炎の痛みとアナフィラキシーの減少を報告した.LOBELL(1962)lo)は骨盤の炎症性疾患の急速な消炎作用を報告した.SPLITTER(1966)11)は副鼻腔炎における有効性を報告している.またKINGら (1968)12} とBAssETT(1974)131 はイヌで骨形成が刺激されることを実験的に示した.WILSONと JAGADEESH(1975)141 は末梢と中枢神経系の治療に関するパルス磁気の影響を研究し,有効性を認めている. ARONOFSKY(1971)15'は口腔内の外科治療において痛みの減少と治癒率の上昇を報告し,GOLDIN (1981)161 は臨床的にパルス磁気により創傷の治癒率が上昇することを報台している.三教予では覚過敏症のしーザー治療に閲する基礎的仇',その臨床応用に閲する研究I9・251を通して,ソフトレ- ザーの鎮痛効果が電磁波効果によるものではないかという推測を得た.磁刃が神経の風蟹性とくに鎮痛に関与するという報告は多い26-3。'.その詳細な作用機序について定説はないが変動磁場が内凶性オヒオィド機構に影響を与えること"-39l,Tイビ!的過程に影料を&ぼい肘1),神経伝達物質の放川に影料を与えるこし39'4243),中枢神経膜へのカルシツ、イオン砧台,細胞内外カルシウムイオンレベルや細胞のカルシワ/、イオン流出量を変化させることなどの説がある.歯科保存半領域において,磁場に上る笛髄の鎖席勅史を期待して歯頚部象牙質知覚過敏症に永久樋口、交流磁場装置を応用した報告もあるが,l・分な鎮痛効果は侍られていない5。-52) そこで,今回,我々はパルス雌式と永久磁石を併用した装置を新たに開発して歯頚部象牙質知覚過敏症の鎮痛消炎療法に関する効果をー重盲検法により臨床的に検討することを目的に本実験を行った.
昭和大学歯科病院を訪れた患者(12人,49人) の中で,歯頚部象牙質知覚過敏症と診断された420症例(前歯113例,小臼歯177例,大臼歯130例)を用いて本案験を行った.
1)Pulse磁気と永久磁石を併用した装置
大きさ約5×20×25mmの曝磁部と曝磁部にパルス電流を供給する Pulse Generatorより構成されている.暴磁部は,直径0.8mmの銅線をコイル状に15回ずつ巻いた2個の永久磁石(サマリウムコバルト磁石:磁束密度3000
Gauss)からなる.それらのK極と S陣を互いに向き合わせて磁性体からなるヨークに取りつけて,凹部に恵歯を挟み込むようにしたものであ・る.コイルにパルス電流を流すと永久舷右の定常磁界にコイルのパルス磁界が重なり合った磁界が生じる.
p3 図 I Pulse Generatorと暴磁装置
図2 *印はコイル,斜線部は磁束密度3,00O Gaussのサマリウムコバルト磁石
(左上:底面図,右上=側断面図・下:正面図)
コイルにパルス電流を供給するPulse Generatorと暴舷装置を図1に示した.図2は暴磁部の底面図,側断面図,正面図である.図3はPulse
Generatorの回路図である.本装置の作動原理は,電源スイッチ1を入れると,変圧器2の出力端子の間にタップの位置に応じた約60-650Vの電圧が取り出され,この電圧はコンデンサー3,ダイオード4,5により整流された半波の倍電圧に変換されコンデンサー6に充電される.一方,整流回路bの出力電圧は,可変抵抗器7を経て,コンデンサー8を充電し,この充電電圧がトリガダイオード9のブレークオーバー電圧を越えるとトリガダイオーⅣま作動し,サイリスタ10のゲートにトリガパルスを与える.するとサイリスタ10が作動し,コンデンサー6に蓄えられた電荷は暴滋部のコイルを経て放電しコイルからパルス状の電磁界が発生する.なお,コンデンサー容量は4μFと1μFに切り替えることができる装置を用いた.弛緩発振回路3では,可変抵抗器7の調整により,パルスの周波数を5-45Hzまで変えることができる.
2)Pulse磁気のみの装置
曝磁部の永久磁石を磁性のない鉄塊で置き換え,ハルス磁気と永久磁石を併用した装置と同一形態のものを用いた.
3)ダミー装置
曝磁部に電流を流しても磁場が発生せず,他の2つの装置と形態的に同じものを用いた.
3.判定基準
歯頚部象牙質知覚過敏症の診断基準は,気銃を用いて恵歯を刺激した時の誘発痛の程度から次のように4
段階に分類した.即ち,全く痛みとして感じないものを0度,軽い誘発痛のものを1度,耐えられるが強い誘発痛のものを2度,耐えられない誘発痛のものを3
度とした.また,気銃をあてる部位,距離,気銃の強さなどは暴磁前後で可及的に同一になるように注意した.さらに,鎮痛効果の判定基準は次のように行った.即ち,3度が0度,2度が0度になったものを著効,3
度が2度,3度が1度,2度が1度,1度が0度になったものを有効,術前と術後の痛みが変わらないものを無効,術前より術後の痛みが強いものを増悪とした.
4.ニ重盲検法
実験とは全く関係のない第三者に依頼して乱数表に基づき,装置を渡してもらい,患者と術者にどの装置あるいは曝磁条件を用いたのか分からないようにニ重盲検法で実験を行った.
5.曝磁条件
1) コンデンサー容量4μF,周波数15Hz,表示電圧32oVの条件下で,パルス磁気と永久磁石を併用した装置,パルス磁気のみの装置,ダミー装置を用いて
5分間暴磁した.
2) コンデンサー容量lvF,周波数1OHz(表示電圧310V),周波数15Hz(表示電圧290V),周波数30
Hz(表示電圧310V),周波数45Hz(表示電圧320V) の条件下で,パルス磁気と永久磁石を併用した装置を用いて5分間曝磁した.
3) コンデンサー容量4μF,周波数5Hz(表示電圧 420V),周波数1OHz(表示電圧380V),周波数15Hz
(表示電圧380V),周波数20Hz(表示電圧320V),周波数25Hz(表示電圧270Ⅵの条件下で,パルス磁気と永久磁石を併用した装置を用いて5分間暴磁した.
6.磁束密度の測定法
パルス磁気と永久磁石を併用した装置で恵歯を挟み込んで暴舷した時,Pulse Generatorの電圧の上昇に伴う歯髄に相当する部位の最大磁束密度の変化を
Gauss Meter ModeI HGM-8400(ADS社製)を用いて測定した.
7.暴磁部のピーク電流,ピーク電圧,ピーク出力,平均パルス幅,平均エネルギー出力の測定法
DMM SCOPE Mode1 zo0(Leader社製)により曝磁部にかかる電流と電圧波形を得て,それらの波形から算出した.
8.暴磁部の温度上昇の測定法
パルス磁気の暴磁により生じる熱の上昇をヒト抜去歯を用いて,15分間暴磁したのち7分間放置した時の暴磁部と抜去歯表面における温度変化をサーモグラフィー(Agema社製)を用いて経時的に測定した.
9.再発についての調査方法
暴磁条件1)すなわち,コンデンサー容量4ムF,周波数15Hz,5分間暴磁条件下で,パルス磁気と永久磁石を併用した装置とパルス磁気のみの装置を用いて暴磁した症例のうち,有効であった77症例のうち,1カ月後にリコールに応じた46症例について検討した.
1.コンデンサー容量4ムF,周波数15Hz,表示電圧320V,5分の暴磁条件では,パルス磁気と永久磁石の併用で50症例中3症例(6.0%)が者効,38症例
(76.0%)が有効,9症例(18.0%)が無効であった.パルス磁気のみでは,50症例中1症例(2.0%)が著効,35症例(70.0%)が有効,14症例(28.0%)が無効であった.ダミーでは50症例中1症例(2.0%)が箸効,6症例
(12.0%)が有効,43症例(86.0%)が無効であった(表 1).パルス磁気と永久磁石を併用したときと,パルス磁気のみの装置を用いて実験したときの有効,無効について,統計学的にx2検定で検討してみたところ,有意差が認められなかった.しかし,それぞれをダミーと検定してみたところ,危険率1%以下で有意差が認められた.
暴舷前の知覚過敏度で分類すると,パルス磁気と永久磁石を併用したとき,1度の群において21症例中15
症例(71.4%)が有効,6症例(28.6%)が無効であった. 2度の群において23症例中2症例(8.7%)が昔効,18
症例(78.3%)が有効,3症例(13.0%)が無効であった. 3度の群において6症例中1症例(16.7%)が若効,5症例(83.3%)が有効で,無効例はなかった.パルス磁気のみの装置では1度の群において22症例中16症例
(72.7%)が有効,6症例(27.3%)が無効であった.2度の群において24症例中1症例(4.2%)が音効,15症例
(62.5%)が有効,8症例(33.3%)が無効であった.3度の群において4症例全てが有効であった(表2).
以上の臨床成績に関して,暴舷前の知覚過敏度を分類した,1度,2度,3度の群の中における有効性について,各群の間で*2検定を行ったところ,危険率5%
で有意差は認められなかった.
2.コンデンサー容量1ムFで,パルス磁気と永久磁石を併用した装置を用いて5分間暴離した時,周波数1OHz,表示電圧310Vの時と周波数15Hz,表示電圧290Vの時,30症例中1症例(3.3%)が者効,14症例(46.7%)が有効,15症例(50.0%)が無効だった.周波数30Hz,表示電圧310Vの時,30症例中8症例
(27.0%)が有効,22症例(73.0%)が無効だった.周波数45Hz,表示電圧320Vの時,30症例中3症例
(10.0%)が著効,10症例(33.3%)が有効,17症例 (57.0%)が無効であった(表3).
これらの有効,無効について*2検定で検討したところ,危険率5%で有意差は認められなかった.
3.コンデンサー容量4メFで,パルス磁気と永久磁石を併用した装置で5分間暴舷した時,周波数5
Hz,表示電圧420Vの時,30症例中18症例(60.0%) が有効,12症例(40.0%)が無効であった.周波数10
Hz,表示電圧380Vの時,30症例中1症例(3.3%)が者効,19症例(63.3%)が有効,10症例(33.3%)が無効であった.周波数15Hz,表示電圧380Vの時,30症例中3症例(10.0%)が著効,18症例(60.0%)が有効,
表 1 4ムF,15Hz,320V,5分の暴磁条件における臨床成績
著効(%) 有効(%) 無効(%) 増悪(%) 症例数
パルス+永久 3(6.0) 38(76.0) 9(18.0) O 50
パルス 1(2.0) 35(70.0) 14(28.0) 0 50
ダミー 1(2.0) 6(12.0) 43(86.0) 0 50
表2 4μF,15 Hz1 320 V,5分の暴舷条件における知覚過敏度別の臨床成績
1度の群 2度の群 3度の群
効果 1」1 1」O 2」2 2」1 2+O 3+3 3-2 3+1 3-O
判定 無効 有効 無効 有効 箸効 無効 有効 有効
箸効
パルス十永久 6 15 3 18 2 O 3 2 1 パルス 6 16 8 15 1 0 3 1 O
表3 パルス磁気と永久磁石を併用した装置を用いて1μFで5分間暴磁した時の臨床成績
箸効(%) 有効(%) 無効(%) 増悪(%) 症例数
1OHz,310V 1(3.3) 14(46.7) 15(50.0) O 30
15Hz,290V 1(3.3) 14(46.7) 15(50.0) O 30
30Hz・310V O 8(7.0) 22(73.0) O 30
45Hz,320V 3(10.0) 10(33.0) 17(57.0) 0 30
表4 パルス磁気と永久磁石を併用した装置を用いて4μFで5分間暴磁した時の臨床成績
著効(%) 有効(%) 無効(%) 増悪(%) 症例数
5Hz,420V O 18(60.0) 12(40.0) O 30
1OHz,380V 1(3.3) 19(63.3) 10(33.3) O 30
15Hz,380V 3(10.0) 18(60.0) 9(30.0) O 30
20Hz,320V 1(3.3) 21(70.0) 8(26.7) O 30
25Hz,270V 2(6.7) 17(56.7) 11(36.7) O 30
9症例(30.0%)が無効であった.周波数20Hz,表示電圧320Vの時,30症例中1症例(3.3%)が著効,21症例(70.0%)が有効,8症例(26.7%)が無効であった.周波数25Hz,表示電圧270Vの時,30症例中2症例
(6.7%)が著効,17症例(56.7%)が有効,11症例 (36.7%)が無効であった(表4).これらの有効,無効について*2検定で検討したところ,危険率5%で各周波数間に有意差は認められなかった.それぞれの有効無効についてダミーと*2検定で検討したところ,危険率1%で有意差が認められた.また,有効と認められたもののなかで,有効率の最も低かった周波数5
Hz,表示電圧420Vの時と,有効率の最も高かった周波数15Hz,表示電圧320Vの時の有効無効について
x2検定で検討してみたところ危険率1%では有意差は認められなかったが危険率5%では有意差が認められた.
4.磁束密度の測定結果
パルス磁気と永久磁石を併用した装置で,電圧の上昇に伴う最大磁束密度の変化を周波数ごとに測定したところ,図4のようなグラフが得られた.本実験で用図
4 Pulse Genaratorの電圧の上昇に伴う磁束密度の 変化
表5 暴滋部にかかるピーク電流,ピーク電圧,ピーク出力,平均エネルギー出力,歯髄相当部の磁束密度の測定結果
いた暴磁条件における歯髄相当部の磁束密度は表5に示す.パルス磁気のみの装置における最大磁束密度は,上
(Gauss) 記の磁束密度より永久磁石の磁束密度を差し引いたものと考えた. DMM
SCOPE Mode1 zo0(Leader社製)により描かれた波形より算出した暴磁部における電流,電圧,平均パルス幅,ピーク出力,平均エネルギー出力の測定結果は,表5に示す.
6.暴磁部の温度上昇の測定結果 実験1で用いた暴磁条件である・ コンデンサー容量
4μF,周波数15Hz,表示電圧320Vの時の,暴磁前,暴磁5分後,15分後,のサーモグラフィ-(Agema社製)により得られた図と,同暴磁条件で,15分間暴舷した後7分間放置したときの6秒毎に温度変化をプロットしたグラフを図5に示す.
他の暴舷条件においても同様に測定し,暴碗5分後と15分後の暴藤部と函表面の上昇温度を表6に示す.
7.再発についての調査結果
暴磁群の有効症例46例中10例(21.7%)に再発が認められた.1度の症例では14例中4症例(28.6%)が再発した.また,2度の症例では26例中3症例(11.7%)
が再発したが,暴磁直後1度であったものがリコール時には0度に改善している症例が11例(42.3%)あった.3度の症例では6症例中3症例(50.0%)が再発した.しかし暴磁直後に2度や1度であったものがリコール時に0度に改善していたものがそれぞれ1例ずつあった(表7).
表5.暴磁部のピーク電流・ピーク電圧,ピーク出力, 平均パルス幅,平均エネルギー出力の測定結果
容量周波数(Hz) 表示電圧(V) 暴磁部 ピーク電流(A) ピーク電圧(V) ピーク出力
(W) 平均パルス幅 (μs) 平均エネルギー出力 (W) 歯髄相当部の磁束密度(Gauss)
1μF 10 310 68 288 19,584 20 0.41 1・550
15 290 68 294 191992 20 0.65 11550
30 310 97 386 37,442 20 2.23 1・700
45 320 106 400 42,400 20 3.60 1,800
4μF 15 320 158 388 61,304 40 4.52 2,250
5 420 173 415 71,795 40 1.72 2,330
10 380 168 415 69,720 40 3.44 2,330
15 380 185 456 84,360 40 6.24 21450
20 320 171 400 681400 40 6.40 2,280
25 270 156 376 58,656 40 7.07 21200
表 6 暴磁部の温度上昇の測定結果
上昇温度 5min. 15mm.
容 量周波数表示電圧 暴磁部 歯表面 暴舷部 歯表面
(Hz) (V) (〇C) (〇C) (〇C) (〇C) 10 310 0.6 一 1.3 0.2
1μF 15 290 1.3 - 2.6 0.7
30 310 7.6 2.4 12.6 7.6
45 320 19.0 5.5 31.6 16.5
15 310 19.7 4.8 30.4
15.1 5 420 5.1 0.9 9.6 3.8
4μF I0 380 9.5 3.2 17.1 9.7
15 380 17.4 4.9 29.3 14.0
20 320 21.7 6.2 35.9 19.0
25 270 22.2 7.0 37.5 20.8
表7 再発についての調査結果
暴脇前の知覚過敏度 暴磁後の知覚過敏度 リコール時の知覚過敏度
0度 1度 2度 3度
1度 0度 1O 4
2度 1度 11 9 3 0度 3
3度 2度 1 1 2 1度 1 1 0度
磁気の歯科保存領域への応用に関して,研究が開始されたばかりで研究報告は少ないが,それらの中で,磁気装置として4500
Gaussのネオジミウム永久磁石を1個使用する定常磁場装置,4500Gaussのネオジミウム永久磁石を2個使用して恵歯を挟み込む定常磁場装置,左右頚部を挟み込む最大出力約100O
Gaussの交番磁場装置が用いられてきた5帖2).定常磁場装置を生体に使用させる場合,定常磁場の場合は長時間連続作用させなければ効果は発現しないが,交番磁場では,短時間の繰り返しにより有効であるといわれている1'.以前の研究で用いた交番磁場装置52)では,左右頬部を挟み込んで暴滋したため,患部と装置の距離により効果に差が見られる傾向にあったが,本実験で用いた磁気装置は,パルス磁気と3000Gaussのサマリウムコバルト永久磁石を併用して,N極とS極を互いに向かい合わせ恵歯を挟み込むようにして,ヨークとして鉄で回りを取り囲み,磁力線が恵歯に集中的に当たるようにしたので効果が高まったと思われる.
さらに,パルス磁気は,交番磁場より発熱が少ないため,出力を高くしても,温度上昇による歯髄への影響が少ないので,5分間恵歯に暴磁することができ,臨床応用が更に容易になったと思われる.
本実験で,コンデンサー容量4μF,周波数15Hz, 表示電圧320Vで5分間暴磁した時,パルス磁気と永久磁石を併用して暴磁した結果とパルス磁気のみを暴した結果に有意差が認められなかったが,それぞれをダミーと検定してみたところ統計学的に危険率1%
で 有意差が認められた.以上の結果から,歯髄の鎮静効果は永久磁石よりもパルス磁気が有効であると考えられる.
しかし,松本ら52)の4500Gaussネオジミウム永久磁石を2個使用して恵歯を挟み込む装置の結果と比較すると,有効率にほとんど違いが認められなかった.この理由として,暴磁時間が約10分と,本実験の
2倍であったこと,永久磁石の磁束密度が太さかったことが考えられる.
また磁束密度の測定結果から,歯の中心部の磁束密度を検討してみると,コンデンサー容量4μF,周波数
15Hz,表示電圧320Vの条件では永久磁行とパルス磁気を併用した装置では約2250
Gaussであるが, Pulse磁気のみの装置の場合,磁束密度はこれより永久磁石の磁束密度である約1300Gaussを差し引いた
950 Gaussと,かなり低しイ画こなる.しかし,両者とも臨床成績において有効性が認められ,パルス磁分と永久磁石を併用した方が有効率は高い傾向はあったが統計学的には有意差は無かった.したがって,磁束密度の大小よりもパルス磁気の周波数が函髄神経の鎮静に関与しているのではないかと考え,コンデンサー客壁
1μF,周波数1OHz,15Hz,30Hz,45Hzで,表示電圧をほぼ同程度に設定し有効性を検討したところ,有意差は認められなかった(表4).さらに,本実験で用いた暴磁条件における暴磁部の電流,電圧,ピーク出力,平均パルス幅,平均エネルギー出力を求めたところ,表示電圧と暴磁部に実際かかる電圧の間にはかなりの誤差があった.そこで,周波数以外はほぼ等しい条件で有効性を検討してみた.しかし,パルス磁気の周波数と有効性の間の相関関係はやはり認められなかった.以上の結果について考察してみると,本装置でコンデンサー容量1μFでは,有効性の認められるような出力が得られなかったためではないかと考えられる.30Hzの時には,他の1OHz,15Hz,45Hzの時に比べて有意差はなかったものの・有効率は少し低い傾向は見られている.また,4μFの時,本装置における最高周波数は25Hzであるため,広範囲に渡り周波数に対する有効性を調査することができなかった.
更に,広範囲に調査すれば,周波数の違いによる有効性への影響を見いだすことができるかもしれない.
BLACKMANら47・53は,ひよこの脳組織を用いたinvitroの実験で,特定の暴舷条件では,細胞からのカルシウム流出量が有意に変化する.それは興奮性組織の一般的性質ではないかと推測している.この報告ではカルシウム流出量が有意に増加する暴滋条件は15Hz
の奇数倍であるとしているが,本実験の結果からこのことを証明することはできなかった.
本実験において有効性が認められた暴磁条件について考察すると,コンデンサー容量が1μFの時には有効性は認められず,4μFの時有効性が認められている.すなわち平均パルス幅が大きい方が歯鮪神経の鎮静に有効であるということが示唆される.また,暴磁部にかかるピーク出力は,有効性の認められたものでは明らかに高い値をボしている.本実験で行った暴滋条件においては,ピーク出力が58,656W以上のものに有効性が認められ,42,400W以トでは有効性が認められなかった.本実験で用いた暴舷条件で有効と認められたピーク出力の最大値は84,360Wであったが
58,656W以上の時の有効性には危険率5%で有意差は認められなかった.また,有効と認められた暴舷条件のなかで最も低い有効性を示した周波数5Hz,表示電圧420Vの時の成績と,最も有効性の高かった周波数15Hz,表示電圧320Vの時の成績とをx2検定で検討したところ,危険率1%では有意差はなかったものの,危険率5%では有意差が認められた.5Hz,420
Vの泰磯条件では,ピーク出力は71,795Wと高い値であったが,平均エネルギー出力が1.72Wと最も低しイ直を示した.これらのことより,約60,00OW程度のピーク出力があれば函髄神経を鎮静することができるのではないかと推測された.そのとき,平均エネルギー出力もパルス磁気の有効性を左右するー因になっているものと思われる.
コ ンデンサー容量4μF,周波数15Hz,表示電圧320 Vの日寺,知覚過敏度による有効性に有意差が無かったことよりパルス磁気は知覚過敏の程度を問わず函髄神経の興奮性を低下させると考えられる.しかし,松本らの報告541によれば同じ理学療法としてのソフトレーザー療法では,60
mWGaAIAs半導体レーザーで30 症例中すべてが有効以上という高度の臨床成績を報告しているが,ソフトレーザー療法では知覚過敏度が大きくなるほど照射時間も長くなり,臨床成績が低くなる傾向がある.この傾向は,今回のパルス磁気治療と異なっているが,その差はソフトレーザーとパルス磁気の作用機序が異なることを示唆するものと思われる.
次にパルス磁気の発生に伴う暴滋部の温度上昇について考察する.
ZACHとCOHENら55は実験動物の歯表面に加えられた温熱刺激による歯髄障害について,歯髄腔内の温度が正常の温度より3ぴF(約1げC)の上昇で100%,20。F(約11。C)で60%,10。F(約5.5。C)では
15%の歯髄組織の壊死を引き起こすと報告している.
また,MMFORDは象牙質の温熱刺激の闇値は 47.7Cであると報告している.
本実験で行った暴磁条件における歯表面の温度上昇の最高値は7. Cであった.しかし,象牙質の熱伝導率がかなり低いこと,U
腔内においては唾液により冷却されること等から,歯髄への為害作用はないと考えられる.また,有効性の認められた暴舷条件での図表面の温度上昇は,0.ぴC,
3.ぴC,4.ずC,4.ぴC,6.ぴC,7.ぴCであった.有効性の認められなかった暴舷条件での歯表面の温度上昇については,上昇が認められなかったもの,2.ぴC,5.すC・上昇したものがあった.これらのことより,歯髄神経の鎮静は,パルス磁気の非熱効果によるものと考えられる.その作用機序については推測の域を出ないが,末梢神経自由終末の神経膜のイオン透過性への影響39'42-49'53カミ考えられる.再発に関しては,暴舷群の有効症例46例中10例
(21.7%)が再発し,1度の症例で28.5%,2度の症例で 11.6%,3度の症例で50.0%であり,3度の症例において再発頻度が高い傾向が認められた.
松本らの報告⑦で,4500 Gaussネオジミウム永久磁石を2個使用して恵歯を挟み込む装置で暴磯後1週間で,暴磯群の有効症例25例中3例(12.5%)に再発が認められた.1
度の症例で再発は認められず,2度の症例で12.5%, 3度の症例で50.o%の再発率であった.本実験では
1カ月後の再発率を調査しているため,少し高い傾向が見られたのであろう.
また最近では,電磁波の人体に対する為害作用が問題とされている.
井上ら57は,定常磁場,交番磁場,パルス磁場の培養歯髄細胞に対する影響を調べ,本実験で用いた程度の暴磁条件では,問題はないということが判明している
磁気による鎮痛効果を期待して,永久磁石とパルス磁気で恵歯を挟み込み暴舷するような装置を開発し,歯頚部象牙質知覚過敏を訴える420症例を被験歯として本装置の有効な暴磁条件を求めるために実験を行ったところ以下のような結論に至った.
パルス磁気と永久磁石を併用した装置,パルス磁気のみの装置,ダミー装置を用いてニ重盲検法で臨床的に検討した結果,
4μF,15Hz,320V,5分間暴磁の時,パルス磁気による歯髄の鎮静効果が認められた.さらに,暴滋条件を変化させて,有効な暴滋条件を検討した結果,パルス磁寿のヒーク出力が約60・00OW
以上の暴磁条件では,臨床的に歯髄の鎮静効果が認められた.
この鎮静効果はパルス磁分の非熱効果によるものであることが示唆された.以上の結果から,今回新たに開発したパルス磁気装置は,歯頚部象牙質知覚過敏症に有効な装置であると結論を下すことができる.
稿を終えるにあたり,終始御懇篤なる御指導,御校閲を賜りました松本光古教授に深甚なる謝意を捧げます.また公研究に閲して貴重な御助言,御指導を賜りました本学口腔生理字教室松力こー只教授,半場道講師に心から感謝いたします.そして本研究の遂了丁に際し絶えず御教ホ,御指導,御校閲を賜りました,本羊歯内療法予講座若林始助教授に心から感謝の意を捧げます.さらに御埋解,御協力下くださいました,本字歯内療法講座と花均講師,渡辺治爾助手、町田孝助モならびに歯内療法学講座各位に深謝いたします.なお,御支援,御協力を賜りましたアルファコイル研究会橋本健理学博士に厚く御礼申し上げます.
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