フィンドホーンの奇跡はなぜ起こったのか!


 1960年代、北極圏からほど遠くないところに位置する、北スコットランドのー寒村「フィンドホーン」の話が、欧米の新聞をにぎわせました。
 そこでは共同生活体が運営され、人びとが植物たちと交信し、すばらしい成果をあげているというのです。
 野菜園や花園は生き生きと活気に満ち、さまさまな植物たちが信じられないほどの生育を示しています。
 例えば18キロもあるキャベツや、2m半もあるヒエンソウ、そして各種のバラが雪のなかで花を咲かせていました。
 記事を読んだポール・ホーケンというアメリカのジャーナリストが、その信じがたい話を確かめるために、現地へ行ってみることにしました。
 生来疑り深い性格と自認する彼がそこで見たものは、18キロのキャベツどころではなかったといいます。
 およそ奇跡としが言いようのない現象が現実に起こっていたのです。(ポール・ホーケン「フィンドホーンの奇跡」日本教文社)
 行ってみてまず驚いたのは、その土地の状況でした。
 北海に突き出た半島のそこは、話の内容からイメージされる豊かな緑はほとんどなく、間断なく吹き荒れる嵐、小石や砂まじりのいかにもやせた土地で、村に着く途中には大きな樹木は見当たらず、ハリエニシダの潅木や鋭くとがった草が生い茂っているだけてした。
 荒涼とした殺風景なこんな場所に、はたしてエデンの園があるのだろうか?
 しかし現地に到着すると、また驚かされました。
 案内された花園にはマリーゴールド、アリサム、ロベリス、パンジー、ネメシア、羊毛のようなアップル・ミント、オダマキソウなどがー列に植えられ、いくつもの花壇にはどこにも花々がこんもりと豊かに咲き誇り、日光を浴びて美の饗宴をくり広げていたのです。
 ツクバネアサガオ、シルバーダスト、アスター、シオン、リビンクストン・デージー、ケシ、フウリンソウ、ヒエンソウ、クラーキア、ヘリクリサム、モンクシュード、ユーカリ、その他数多くの植物が、すでに肌寒い九月末というのに完壁に咲き誇っているように見えました。
 緯度からいえば、ここはモスクワやアラスカのー部がらさらに北に位置しています。
 しかしバラは道路をおおうばかりに満開で、2メートル近いコスモスには蜂が群れ、花々はネオンのように輝いています。
 この花園からすこし離れたところに、時速100キロ近い強風に吹きあおられているにもかかわらず、強くまっすぐに立っている木々がありました。
 土地のかラマツ、エゾマツやハナミズキ、サンザシ、キングサリ、ユーカリ、ナナカマド、ポプラ、シラカバなどです。
 また花園と木々のあいだには、スイカズラ、アメリカマンサク、ハコネウツギ、ライラック、ツルバラなどの権木林がありました。
 彼は花園のあちこちの土のなかを調べてみると、どこの土も、堆肥の下に六、七センチメートルほどの砂の層があります。
 まるで、海浜公園の中にある花園といえるでしょう。
 おそらく専門家や化学的権威は、この現象のナゾを解明できないかもしれません。

野菜の 〃精霊〃 が話しがけてきた
「私は話すことができる」とエンドウ豆からメッセージが

 フィンドホーンの生活共同体を始めたのは、元英国空軍少佐のピーター・キャディとそのー家、それにドロシー・マクリーンというカナダの外務省に勤めていた、イスラム神秘主義の研究者でした。
 彼らのそれまでの人生には、それぞれいろんな経緯がありましたが、共通していえることは、みな何らかの信仰心をもっていたことです。
 彼らは1962年、ピーターの言葉を借りれば〃ある全能の力の意志〃の啓示によって、住み慣れた土地を引き払い、ここへやってきました。
 ほとんど砂と砂利から成り、嵐のような強風にたえず吹きあおられ、緑といえばわずかにエニンダのやぶとシバムギの類、そしてトゲだらけのモミの木が帯状に植わっているだけでした。
 彼らは土地を掘り起こし、板とコンクリートで防風のための塀を作り、近在の農家から堆肥をもらい受け、せっせと農園を作りはじめました。
 こんな土壌は使いものにならない(事実そうでした)し、作物も育たない、やっても無駄だろうと否定的に考えることもできたのですが、彼らはそうしませんでした。
 きっとなんとかなると、いつも肯定的に考えていたのです。
 そしてレタスを植え、クレソン、トマト、キュウリ、ホウレンソウ、パセリ、カボチャ、アスパラガスなどを植えていきました。
 二力月もすると、その成果は近所の人びとを驚かせました。
 立派な作物が実り、そのころ付近一帯に異常発生した根を食い荒らすキャベツ根虫からも、キャディ家のキャベツだけが害を免れたのです。
 また果実がジャムになるクロフサスグリの収穫量があちこちの家で落ち込んだのに、ここだけは大量の収穫増でした。
 彼らはいっさいの化学肥料も農薬も使いませんでした。
 一家の夕食の献立である野菜シチューは、菜園から取れたばかりのタマネギ、シロネギ、ニンニク、ニンジン、パースニップ、ルタガバ、アーチィチョーク、コールラビ、セロリ、カボチャ、ジャガイモ等が材料で、いろんな種類のハーブで香味がつけられていました。
 真夏になるとたくさんのキイチゴ、クロイチゴ、オランダイチゴからジャムを作り、赤キャベツとキュウリを漬けます。
 冬のあいだには次のシーズンのための土壌の準備をし、リンゴ、スモモ、サクランボなどを植えました。
 あるとき、熟した赤キャベツの重量を計ってみると、なんと17~19キロもあったのです。
 またブロツコリーは巨大に生長して、地から引き抜くときには重すぎてほとんど持ち上がらないほどでした。
 おそらく専門家には説明のつかないようなこうした現象がなぜ起きるのか、多くの人にも理解しがたいでしょう。
 しかしそのいきさつを見てみると、ここにも愛情をもって植物と交信した人たちの軌跡が見えてくるのです。
 ドロシー・マクリーンがキャディ家といっしょに働くことになるすこしまえのある日、座って瞑想をしていると〃声〃が聞こえてきました。
 「すべては〃ひとつ〃 の生命である。
 生命をふたたび一体化するため、あなたの役割を演じなさい。〃私〃の助けをもって」
 彼女は最初、この言葉の意味がよくわかりませんでした。
 しかし次の日にふたたび「あなたは園で協力することになるが、そのとき〃自然の精霊たち〃のことを考えて働きなさい」という〃声〃を聞くと、何か信じられないような気がしました。
 そして数日後、ためしにエンドウ豆に思いを寄せてみると、びっくりするほど明瞭なメツセージが送られてきました。
 「人間よ、私はあなたと話すことができる。私は自分に与えられた摂理にしたがい、植えつけられ、形作られ、それを結実させるだけだ。あなたは私の意識性に気づいた。私は自分の働きをよく心得ている」
 ドロシーからこの話を聞いたピーターは強い関心を示し、自分たちの栽培法が間違っていないか、もし誤っているとすればどうしたらいいか、具体的に指示を聞いてみてくれといいました。
 ドロシーが交信してみると、驚くほど的確で具体的な指示が返ってきたのです。 
ソラ豆の精霊…「最初の区画は種まきが深すぎたし、園のいろいろな力が十分強くなるまえだった。だからできはよくないだろう」
 トマトの精靈・・「トマトには寒気がひどすぎるが、護ってやろうと思う。 いま、液体肥料を与えなさい。実がすこし形を成すまで、風よけはいまのままにしておくように」
 ホウレン草の精靈……「葉を強く自然に生長させたいなら、いまよりもあいだを広くしなければいけない。いまのままだと葉は全体に大きく、多分すこしやわらかくなるだろうが、生命力は乏しいだろう」
 ナタ瓜の精霊……「直接、接触できてうれしい!われわれは園にいろいろな力を感じ、見てもいるが、それでも接触はやはり喜びである--めったにないことだ。いま、われわれには大量の余分な水は必要ではない。植物は順調に育っているし、幸福であり、よく適応している」
 日本最古の書物『古事記』には、大昔、人びとは草木と語り合っていたという記述があります。
 このフィンドホーンの話を聞くと、私たちの祖先の豊かな精神生活というものが、にわかに現実味を帯びて想像されるような気がしないでしようか・・・。



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